TOP - 医学生・研修医の方へ - 海外留学の実際 - Royal Orthopaedic Hospital NHS Foundation (金内 洋一)

Royal Orthopaedic Hospital NHS Foundation (金内 洋一)

金内 洋一

留学先名(期間)

Royal Orthopaedic Hospital NHS Foundation(2019年4月~2020年3月)

 

臨床と臨床研究

<仕事・研究>

私が留学したRoyal Orthopaedic Hospital (ROH)は、整形外科の単科病院ですが、転移性腫瘍を含めて年間約3000例の骨軟部腫瘍症例の治療をしている施設でした。そのため、留学では、骨軟部腫瘍手術の研修と臨床研究を主に行いました。

Consultantが8名おり、多い時には3、4列並列で骨軟部腫瘍の手術が行われているときもありました。また、世界中から多くのフェローが骨軟部腫瘍の治療を学びに留学していました。

私が海外留学先としてROHを選んだ理由としては、以下の4つでした。

①留学期間は1年間としたい

②術野に入って手術に参加したい

③骨軟部腫瘍症例の手術を数多く行っているハイボリュームセンターに行きたい

④日本人が留学中、または留学したことがある施設に行きたい

留学期間についてはビザの問題が出てきます。私の留学先の候補として、オーストラリアのSt Vincent’s Hospital Melbourne、イタリアのthe Rizzoli Orthopedic Institute、イギリスのROHの3つがありました。ビザの関係でイタリアは半年しか留学できないようだと知りました。しかし、ROHでは1年間の留学が可能であり、当時ROHには岡山大学の藤原先生と東京大学の津田先生がご留学していたこともあり、研修内容について具体的に聞くことができ、これらの条件を満たすROHへの留学を希望しました。

 

私はナイジェリア人のAbudu教授に師事し、骨軟部腫瘍だけでなく、TKAやTHAなどの手術について、多くのことを学びました。

また、豊富な症例数を背景に、希少がんである骨軟部肉腫の後方視的な臨床研究のテーマが豊富にあり、多くの研究に参加することができました。

大まかな1週間の流れとしては、火曜日の午前中が全体カンファレンス、午後が専門外来で、その他は手術日でした。それぞれのConsultantによって手術日が決まっており、Abudu先生の手術がない時には、他のConsultantの先生方の手術に混ぜてもらいました。また、腫瘍の手術がない時には、図書館の電子カルテで臨床研究のデータ集め、統計解析、および文献検索を行い、論文作成をしていました。

Abudu教授、フェローと手術室にて

留学最終日に記念撮影

 

私と同時期に東北大学整形外科の吉田新一郎先生もROHに留学されており、一緒に臨床研究や手術を行い、多くのことを学ばせていただきました。

診療や研究の合間にROHのスタッフと親睦を深める会がありました。クリケットを体験したり、consultantの家でディナーをご馳走になったり、非常に楽しい思い出となりました。

Abudu夫妻とディナー

Tillman先生のご自宅にて

 

ROHには1年間の留学でしたが、岡山大学の藤原智洋先生、東京大学の津田祐輔先生、東北大の吉田新一郎、および海外からのフェローらとの研究を含めると、これまでにROH関連では15本の英語論文がパブリッシュされています。1年間にこれほど多くの研究に参加させていただき、人生ががらりと変わりました。福島県立医科大学の後輩の先生方はもちろんですが、他大学の先生方にも是非、ROHでの留学を経験して頂きたいです。

 

<生活>

海外留学に向けて、兎にも角にも生活の基盤を整えることが一つ目の課題でした。まずは、事前準備として家を借りることが一つの問題で、私は、エイブルのロンドン支店とコンタクトをとり、日本人スタッフと日本語でやり取りしました。また、何個か物件を提示して頂き、オンラインで内見して最終的には、ROHから徒歩3分程度のフラットに決めました。

イギリス留学には、当時1歳の娘と妻の3人で行きました。慣れない言葉や環境で、生活を安定させるのに1か月程度かかりました。色々と苦労したことが多いですが、バーミンガム在住の日本人の方々と繋がりができたことは非常に大きな転機となりました。また、現地の銀行口座を開設することが生活を安定させる上で非常に重要でした。現地では自家用車を所有していなかったので、移動手段は公共交通機関かUberでした。現地の銀行口座を持っていることで、交通手段の支払いが断然楽になりました。また、携帯電話の契約をする際や公共料金の支払いにも非常に有用でした。

食事は、当初はベーグルやベーコン、目玉焼きなどを食べていましたが、次第に日本食が恋しくなってきました。バーミンガム大学の周辺に韓国食材を売っているお店を見つけ、米やラーメン、お茶漬けなどを買って生活しました。

キッチンの様子

電子レンジを購入し帰宅

 

<旅行>

留学中にはできるだけ多くの場所を訪れたいと考えていました。月に1度程度はバーミンガム以外の土地に出かけて、ヨーロッパの歴史や文化に触れることができ、非常にいい経験となりました。

留学中に訪れた場所は、イギリス国内だとロンドン、レスター、バース、マンチェスター、ケンブリッジ、オックスフォードおよびコッツウォルズ、国外ではエジンバラ、パリ、ストックホルムです。日本とは異なる文化に触れる機会に恵まれ、海外のすばらしさを知ると同時に、日本の良さに改めて気づく貴重な機会となりました。

コッツウォルズの風景 

ノーベル賞博物館

 

<その他:サッカー>

最後に、私は幼少期よりサッカーをしていたので、プレミアリーグの試合を観戦することが一つの夢でした。現地在住の日本人の方にチケットの手配をしていただき、スタジアムまで車に乗せてもらい、最前列で多くの試合を観戦できました。世界のトップリーグの迫力を間近で体感でき、最高の思い出ができました。

レスターシティFCのホームゲーム

最前列で試合観戦

 

<後輩の先生方へ>

海外留学は非常にハードルが高いと考えている先生が多いと思います。もちろん言語の壁や文化の違いなど戸惑うこともたくさんあると思いますが、多くの人との新たな出会いや経験を通して、より深のある人生を送ることができるようになると考えます。海外留学に対して臆することなく、チャンスがあればどんどん挑戦してください。