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大腿骨近位部骨折

大腿骨は股関節からすぐのところ(大腿骨頸部)で曲がっています。人間はその曲がった大腿骨で体を支えていますが、曲がったところは転倒や転落の時に外力が集中しやすく、骨折しやすいのです。

この骨折は骨粗鬆症で骨がもろくなった高齢者に多発することで有名ですが、本邦でも年間10数万人が受傷し、多くの方が骨折を契機に寝たきり、閉じこもりになってしまうので社会問題となっています。

医学的には、病態が大きく異なりますので、関節の中で折れる場合(大腿骨頚部骨折)とそれよりもう少し膝側の関節外で折れる場合(大腿骨転子部骨折)の2つに分けて考えます。

頚部骨折は、骨粗鬆症がある場合、ちょっと脚を捻ったぐらいでも発生します。よくあるのは高齢者が何日か前から足の付け根を痛がっていたが、或る時急に立てなくなったというエピソードです。一方転子部骨折は明らかな転倒・転落で発生します。

両者の大きな違いは、頚部骨折は血液循環が悪いため骨癒合が得られにくいが、その一方関節内のため周りにスペースがなく内出血も少なく、転子部骨折と比べると、比較的痛みが軽く、座位などが可能な場合があり、転子部骨折は骨癒合は得やすいが、受傷時の外力も大きく、内出血もするため、疼痛が強く、全身状態に影響が出やすいということです。

予防と治療:予防は折れにくい骨を作るという意味で骨粗鬆症の治療を行うことと転倒しにくい環境を整えるという2点です。骨粗鬆症の治療は食物、薬物、運動ということになりますが、特に女性の場合は正常でも更年期以後年率で1%づつカルシウム量が減るといわれており、普段から検診等でチェックすることが大切です。

もし骨折が発生してしまった場合は、安静期間中に認知症や、廃用萎縮といって動けないうちに運動機能がおちて寝たきりになってしまうことがありますので、何らかの手術療法を考えることが増えています。通常は骨を繋ぐ、骨接合術、人工の物に置き換える人工骨頭置換術の手術が一般的な手術治療となります。ただし、あくまで全身状態、それまでの生活の状況、本人、家族の意思を総合して治療を行なっていくことが大切となります。